探偵言いたい放題

夏の終わりに「ギャランドゥ」

 あれは夏の終わりも近づく一夜の出来事であった。
 依頼内容は、夫(和男、29歳)の浮気である。悩む妻(美子、27歳)はとても美人であり、3歳の子供が一人いる結婚5年目に訪れた危機であった。
 夫の浮気相手は、24歳のOL(L子)で、和男を奪い結婚することを望んでいるかたわら、愛車のソアラを乗り回す"男大好きで恋多き女"である。
 調査、開始後の3日目、ついにヒットした。和男が女と接触し、女の所在が割れた。その後もヒットを繰り返し、浮気の証拠が確たるものとなっていった。
 この浮気、やっかいなパターンであり、下半身の付き合いだけではないようだ。つまり、本気の付き合いのようである。
 このようなケースにおいて仮に離婚をしても、この2人の付き合いの結果は見えたものである。
 ほとんどのケースにおいて上手くいかず、破局を迎えるのである。それは何故か?このような場合において、浮気で恋を楽しむ2人にとって、最大の悪者は、妻になる。ここで言うなら、和男は、妻、美子の不満を話し、L子も和男への想いから納得する。そんなL子が生活のはけ口からやがて良き理解者となり、やがて絶対的な存在となっていき、L子も妻、美子へのジェラシーが生まれ、エキサイティング且つダイナミックな………恋へと進展していくのである。
 つまり、この恋は、妻、美子が"悪"だから成り立つのである。
 「若き既婚男性の方々、お気をつけ下さい。」「下半身ならまだマシである。」
 しかし、何時も思うのであるが、男の浮気、これは景気の良い悪いに関係なく、20世紀、21世紀に関係なく、地球に関係なく、全宇宙、全時代に言えるかもしれない永遠の課題なのであろうか?この方程式が続く限り、男と女がいる限り、調査業なるものもまた続くのであろうか…
 さて、一方で、妻、美子は、離婚を決意していた矢先、夫、和男から離婚届を突きつけられたのである。美子は、ショックの色を隠せない様子であった。
 美子は、これで最後と言い、調査を再度頼んできた。確実に女と会うと思われる日の夫、和男の尾行張込である。これで契約終了になる最後の調査であった。「その時、美子の覚悟にも似た何かを感じた…」「その瞳は、怖ささえ感じられた…」「まさか…」、しかし、私のアドバイス、忠告にもうなずいていた。
 その最後となる調査(尾行張込)を開始した。和男の仕事が終わる19:00以降を予定通り狙った。
 時計が21:00を回った頃、和男がL子と接触した。「よし、ヒットだ!」
 2人は、パチンコ屋で1時間程過ごし、その後、コンビニで買い物をして、カラオケBOXへ入った。時間は、22:30頃であった。
 最後の契約の条件として、美子は「食事でも何でもいいのでとにかく、何処かへ居座ったら連絡をください。そこで調査契約を終了させて頂きます」ということであったので、私は、不吉な予感を感じつつ、契約通り連絡を入れた。すると美子は、有難うございました。とあっさり言って電話を切り調査契約は終了となった。私は、まさかと思った。何時もの美子ならば、調査報告後もいろいろと相談をもちかけ、私もそのアドバイスを的確にしていたが、今回は、こんな感じである。更に、必要とする証拠をほぼ収集したにもかかわらず、最後にこのような依頼をしてくる。何故かはお解かりでしょうか?皆様?
 結果はこうです。私は、心配なので2人のいるカラオケBOXの現場にしばらくいてみた。
 すると、私の予想通り現場に来たのである。妻、美子が!私は、この契約の前に、決して2人のいる現場へは行くチャンスがあっても行かないようにと忠告していたにもかかわらず…。その美子の表情は、美女の面影はなかった。修羅の女人(にょにん)とでも言うべき顔であった。「もう誰にも止められない」。
 美子は、そのまま2人のいるカラオケBOXの部屋へ乗り込み突撃していった。すると中では、夫、和男が笑顔で歌っていた。「悔しいけれどお前に夢中ギャランドゥ・ギャランドゥ~」しかも、"お前に夢中"の歌詞のところでL子を指差し、自身の"ギャランドゥ?"を見せながら…
 そして、和男は、やっと美子に気がついた。馬鹿殿が驚いたような顔で。L子は、ぼう然…
 部屋は、ギャランドゥのカラオケが夏の終わり、2人の終わり、全ての終わりを告げるように響いていた…